赤ちゃんが産まれて、初めて迎えるお節句を初節句と言います。五月五日の端午の節句がこの日にあたり、男の子の無事を願い「鎧や兜」などの五月人形を飾ります。
起源は古く奈良時代の災厄を祓う行事からですが、男の子の立身出世や無病息災の行事として確立したのは江戸時代中ごろのことです。
子どもの生存率が低かった時代のことで、現代では当てはまらないことも多いのですが、我が子を想う親心は時を経ても変わりません。
では、どのように伝えられてきたのでしょうか。
このような風習は、お子さまを授かってはじめて知る事も多いはずです。美しい日本の伝統文化を次世代のお子様たちにもつないでいただけますよう、少しでも関心を寄せていただけましたら幸いです。
なぜ、鎧や兜を飾るの?
長い武家社会の中で、鎧や兜は身を守る大切な役目をもっていたため、今日ではその精神を大事にし健康祈願として飾るようになりました。
男の子の誕生を祝い無事に成長して、強く、立派な男子となるようにとのご家族の願いがあります。つまり、鎧、兜が身を守ってその子に災いがふりかかりませんように、受験・就職・結婚など、人生の幸福に恵まれますようにという思いが込められているのです。
なぜ、鯉のぼりを揚げるの?
鯉は、池や沼地でも生息できる生命力の強い魚です。その鯉が激しい急流をのぼり、竜門という滝を突破すると、強い竜となり、天へのぼるという「登竜門」の伝説が由来です。つまり、どんな環境にも耐え、立派人になるようにとの、子供の立身出世を願う飾りなのです。
内飾りと外飾りは、どちらがいいの?
五月人形の飾りには大きく分けて、外飾り(鯉のぼりや武者絵のぼり)と 内飾り(鎧、兜飾りや子供大将飾り)があります。
立身出世を願う鯉のぼりと、子供の無事な成長を願う内飾りは意味が違います。
そこで、両方を飾ることが望ましいのですが、住宅事情もあり内飾りをメインに鯉のぼりを小さく、もしくはそのどちらか片方しか飾らないなどの選択も増えてまいりました。
土地の風習を尊重しながら、その中でそれぞれのご家庭にふさわしい飾り方を工夫してもよいかもしれませんね。
端午の節句に「菖蒲」を飾るのは?
菖蒲は、男の子にふさわしい「勝負」や武士道を重んじる精神「尚武」に通じている事と、このシーズンに咲く事から端午の節句には欠かせないものとなっています。
古来中国から伝わったこの習慣は、元来は軒につるし魔除けとし、よもぎの冠を かぶり菖蒲酒(菖蒲を浸した酒)を飲み、蘭の湯を浴びたそうです。
現在、日本の習慣として行われているのは菖蒲の湯に入ることですね。葉菖蒲の葉や根を刻んで布袋に入れて煮出し、湯舟に入れて入浴すると、神経の緊張をほぐし、血行を助けてくれます。
五月飾りは誰が贈るの?
一般的には、お嫁さんの実家から贈られるとされていますが、今日では、可愛い孫や子供のためにと両家で折半することや若いご両親たちが求めることも多くなりました。
地域によっては、鎧や兜の「内飾り」は母方で、鯉のぼりや幟旗など「外飾り」は父方で用意するなど、ある程度取り決めがされているところもあるようです。
親戚や友人は、「名前旗」や「室内鯉のぼり」などの脇飾りがおススメです。
このような風習には、かなり地域性がありますのでお近くの人形店でお確かめ下さい。
飾る時期はいつからいつまで?
春の彼岸明けから、遅くとも四月中旬頃までには飾りしましょう。そして、季節の節目のお飾りなので、五月五日が過ぎたら湿気に注意し丁寧にお仕舞します。
お子様の無事の成長を祈願するお節句飾りは、少なくとも成人するまではお飾りしたいものです。
次男・三男が生まれたら?
基本的には「ひとり一飾り」とされます。お節句飾りは、成長と幸せを祈るお祝いの飾りで、その赤ちゃんの身代わりとなって厄を受けるものとされてきました。
つまり、すでに悪い厄を背負った五月人形は共用できないという考えからです。最近では、かなりコンパクトなお飾りも増えてまいりましたので、住宅事情を考慮しながら、それぞれのお飾りでお祝いすることが望ましいでしょう。
まとめ
以上、五月人形に関する主だった疑問を載せてみました。
お節句飾りは、こうしたおまじない的な趣意のもと、男の子の情操教育に役立ってきたものです。
「素朴な疑問」ページには、雑学的な疑問も載せていますので、ご参照ください。