多くの職人さんが切磋琢磨しながら作りあげた「雛人形」はどれも素晴らしものですが、その中でも、独自の趣向と群を抜いた技量で定評のある「磊楽(らいらく)人形工房」の作品をご紹介いたします。
“小さな子が喜ぶから…” “可愛いから…” だけではなく、末永く愛でていただけるおひな様として自信をもっておすすめ致します。
こちらのおひな様たち…。
妙に惹かれますね~!
他と何が違うのかしら?
お気づきですか?
「美」を追求しようとする、
この工房独自の工夫があるんですよ!
姫の髪形も殿の冠も、他にも…。
職人さんたちの努力ですね‼
ネットでも買えるんですか?
残念ながら、販売していません。
職人の高い技量のもと、一貫した自社工房内制作のため大量生産はできないのです。
そのため、取り扱い店舗も特約指定で県内では当店だけなんですよ。
磊楽(らいらく)人形工房とは?
こだわりの作品を生みだす職人方々
一般的なひな人形制作は外注による分業体制であり、お顔やボディなどを制作している専門メーカーの既製されたパーツを組み合わせることで、大量生産を図ります。
鑑賞するうえで、全体の均整はとても大切です。
そこで妥協のない作品作りをめざし、自社工房内での一貫した制作を行っています。
つまり、外注の既製された部品には頼らず、同工房内の頭師・結髪師・着せ付師などの専任職人が、完成図であるデッサンを基に研鑽と工夫を重ね、理想とする一体の雛人形を仕上げます。
特に、他工房との大きな違いは、より本物志向的な人形つくりのために、「手指」や「冠」にいたる細やかな部分にまで独自の工夫を施していることです。
量産が進み制作工程も省略されるなか「美」を追求することに妥協を許さない、数少ない工房です。
深奥で豊かな「表情つくり」
現代の環境に適した素材と伝統技法
人形作りのなかで職人の技量が最も反映されるのが「お顔」の作りです。
むかしは、伝統的な素材として本練り(ほんねり)と呼ばれる桐材の粉を固めた桐塑(とうそ)を使用していました。しかし桐素材は冷暖房が普及した現代では急激な温度変化による膨張と収縮を繰り返えすため、顔の表面にヒビ割れが生じやすく、今日ではより環境に適した素材として石膏を使用しています。
素材を変えたとしても伝統技法や工程は省くことなく、生き生きとした深く味わいのある表情を作り出すことに今も昔も妥協はありません。
「幸せな笑み」を大切に表現
お顔を表現するためには何工程もの作業が必要ですが、大量生産化された今日では、省かれている工程もあります。
当工房では伝統技法を継承することで、人形の命ともいわれる“表情”を大切に作りあげています。
一、昔ながらの丁寧な胡粉ハケ塗り
胡粉(貝の粉)を丁寧に塗ることで自然な艶や立体感を出します。一般的にはスプレー式で塗布することが多いが、刷毛で幾重にも塗り重ねることで目、鼻、口元の立体感や微妙な陰影を表現できます。
二、彫刻刀を使い細部を切り出す
目元、小鼻、口元に立体感を出すことで、離れて眺めても表情がハッキリします。小鼻の輪郭や口元を小刀で掘り上げ歯や舌を細工することで表情に深みを出し、目元は瞳のバランスを見ながら切り出すことで優しい表情を作ります。一般品では、この切り出しという細工を省略することが多いです。
三、繊細な技で毛を描く
髪の毛の生え際の描きにご注目ください。お顔をより美しく立体的に彩るために繊細な技を施しています。描き方を変えることで男雛の力強さと女雛の優しさを表現しますが、その技法は大変難しく当工房内でも少数の職人に限定されています。 一本ずつ極細に描いた眉毛も、必見です!
(※「夢香雛」限定の技法)
四、髪の毛は品の良い「絹糸」仕様
一般的には、コストや技法的にも扱いやすいナイロン毛を使うことが多いのですが、絹毛(糸)を使うことで妙な光沢感を抑え落ち着きのある品の良いお顔に仕上げます。
古典的な「描き技法」による独特な表情
当工房内でも限られた職人の希少な技
~手描きの目元が温かい~
独特な表情作りにこだわれば、イメージしたとおりのお顔を表現したいと願うのが本物の職人気質でしょう。
お雛様の目は、一般的にプラスチックやガラスで仕上がった既製の眼球を使用しますが、こちらの作品は「手で描く」という最も古典的で難しい技法で仕上げられています。
薄目の墨を使い微妙な濃淡を出しながら、黒目・瞳の輪郭を一筆一筆塗り重ね描き上げていきます。描き目とは思えないほど繊細な仕上がりで、本物の技量をもつ職人ならではの作品です。一般的なお雛様の目元とはひと味違う独特な温かみのあるお顔は稀少であると言えます。
安定感のある「端正な造形」
鑑賞するものだから、バランスが大切!
お顔やお衣装が、どんなに美しく素晴らしいものでも「形つくり」が不自然だと違和感が生じます。
当工房では、はじめにその理想とする人形のイメージをデッサンします。その構図の中でお顔とボディの均整、そしてそれに合わせ造形される冠や手指の細部までを、いかに一体感のある自然なかたちに造形するかを考えます。それをもとに同工房内の頭師・結髪師・着せ付師などの専任職人たちが研鑽と工夫を重ね制作しますので、とても調和のとれた端正な型に仕上げることができます。
「正三角形に収まる安定感のある形つくり」
ひな人形の「真の美しさ」を堪能
美しく端正な形をしたおひな様は、それだけでも十分に存在感があります。豪華なお飾りセットも素敵ですが、シンプルなスタイルは良質なおひな様をさらに引き立ててくれます。
「金屏風と緋もうせん」による伝統飾りがとても素敵ですので、合わせてご参照ください。
当工房ならではの独自の工夫
冠の工夫で、お顔をより美しく表現
さらなる美を追求するために、平安時代の宮中で実際使用されていた「式正の冠」を再現しました。
一般的な冠はヒモで結び固定しますが「式正の冠」は、コウガイと呼ばれる横棒を頭のマゲにさし込み装着します。そのため、お顔や胸元に掛けヒモや結び目などがなくスッキリと品格のあるお顔に仕上がります。
これは「冠の大きさ・頭の大きさ・髪結いのマゲの位置」など、全てが計算された緻密な作業のもと作品化されているものです。
「頬からアゴのラインを立体的に美しく表現!」
細部までこだわった「手」のつくり
より自然な造形を目指すと、既製品の手ではバランスがとれません。
そのため、作品一つひとつに合わせた「手指」を作りあげています。お殿様の威厳を表現した手の形や、お姫様の女性らしい細やかで動きのある指など、他には類のない工夫です。
髪型で印象が違う!姫の髪形も二通り
古典下げ髪 ( こてんさげがみ )
~本物志向派に、おすすめ!~
平安雅の世界を彷彿させます。平安時代には、長い黒髪が美人の条件とされ、両頬の髪の毛を切りそろえることで顔を面長にみせたり顔の白さを強調しました。
雛人形では目新しい髪型と思われがちですが、大垂髪(おすべらかし)よりも歴史的には古く江戸時代中期以前から使用されていたものです。大垂髪よりも技法的に難しく大量生産には適さないために最近ではあまり見かけず、希少なタイプとなりました。
やや面長なお顔には優しさと品格があります。
大垂髪 ( おすべらかし )
~定番派なら、こちらを!~
平安時代からの垂れ髪形式が鎌倉・室町を経て江戸時代に至り、ビン(前髪部分)を大きく張った髪型となりました。
雛人形が現在の姿になったのは江戸時代後期でしたので、雛人形の髪型はその頃の宮中の髪型「大垂髪」が採用され現在に至っています。
落ち着きのある高貴なお顔のお雛様です。
まとめ
以上、磊楽人形工房のひな人形をご紹介させていただきました。
この工房が、他工房と違うのはより本物志向的なつくりを目指し独自の工夫を施しているところです。
また、しっかりとした節句人形への意義や作業理念を持ち、その真摯な思いがこの素晴らしい雛人形つくりに反映されている気がします。
一つひとつの作業がとても丁寧で末永く愛でていただける作品として、安心してお勧めさせていただいております。